足立美術館

足立美術館

足立美術館は、島根県の安来市に位置し、地元出身の実業家、足立全康氏によって昭和45年に開館されました。この美術館は、日本画の著名な巨匠である横山大観をはじめとする近代日本画家の作品を収蔵し、美術館としてだけでなく、美しい日本庭園も併設しています。
足立美術館のコレクションには、竹内栖鳳、川合玉堂、富岡鉄斎、榊原紫峰、上村松園などの近代日本画の作品が含まれており、特に横山大観の作品は質量ともに日本有数で、約120点が収蔵されています。横山大観の作品は横山大観特別展示室で展示され、その繊細で大胆な作品を鑑賞できます。
美術館の庭園は、日本庭園ランキングで日本一に輝くほどの美しさを誇ります。5万坪に及ぶ庭園は四季折々の美しい風景を楽しむことができ、特に「白砂青松庭」は横山大観の名作「白沙青松」をイメージした庭で、白砂と松のコントラストが印象的です。美術館の庭園は日本の美を感じる贅沢な場所で、季節ごとに展示替えが行われ、訪れる人々に飽きさせません。
足立美術館は横山大観のコレクションと美しい庭園で知られ、日本画や日本の美に触れる絶好の場所です。訪れた際には、日本の芸術と自然の調和を堪能してみてください。

基本情報

名称
足立美術館 (あだちびじゅつかん)
所在地
〒692-0064 島根県安来市古川町320
アクセス
・JR安来駅から無料シャトルバスで20分
・JR安来駅からタクシーで15分
・JR安来駅からイエローバス(広瀬・米子線広瀬バスターミナル行)で約25分、さぎの湯温泉・足立美術館前下車
・山陰道安来ICから車で15分
駐車場
あり 無料 普通車400台
営業時間
9:00~17:00(10~3月)/ 9:00~17:30(4~9月)[※所要時間120分]
定休日
年中無休(新館のみ休館日あり)
料金
<入館料>・大人:2,300円 ・高校:1,000円 ・中学生:500円 ・小学生:500円 ・大学生:1,800円
※2年間パスポート6,000円 ※土曜日は小中高生無料(要学生証提示)
連絡先
電話番号:0854-28-7111
公式サイト

マップ

詳細情報

▶美術館創設までの歩み
足立全康は明治32年(1899)2月8日、能義郡飯梨村字古川(現、安来市古川町:美術館所在地)に生まれました。小学校卒業後すぐに、生家の農業を手伝いますが、身を粉にして働いても報われない両親を見るにつけ、商売の道に進もうと決意します。14歳の時、今の美術館より、3kmほど奥の広瀬町から安来の港までの15kmを大八車で木炭を運搬する仕事につきました。運搬をしながら思いついたのが炭の小売りで、余分に仕入れた炭を安来まで運ぶ途中、近在の家々に売り歩き、運賃かせぎの倍の収入を得たことがいわば最初に手掛けた商いといえます。その後紆余曲折、様々の事業を興し、戦後は大阪で繊維問屋、不動産関係などの事業のかたわら、幼少の頃より興味を持っていた日本画を蒐集して、いつしか美術品のコレクターとして知られるようになっていました。また若い頃から何よりも好きであったという庭造りへの関心も次第に大きくなっていったのです。そしてついに昭和45年、71歳の時、郷土への恩返しと島根県の文化発展の一助になればという思いで、財団法人足立美術館を創設しました。
▶絵画蒐集のエピソード
足立全康の蒐集への情熱は定評のあるところですが、中でも一番思い出深い出来事といえば、昭和54年に北沢コレクションの「紅葉(こうよう)」「雨霽る(あめはる)」「海潮四題・夏」をはじめとする大観の作品群を一括購入したことでしょう。昭和53年に名古屋の横山大観展で見た「紅葉」(六曲一双屏風)に言葉も出ないほどの感動を受け、何が何でも手に入れるのだと八方手を尽くしたところ、門外不出の「幻のコレクション」といわれた北沢コレクションの一部とわかりました。当時、管財人の手元にあり、その中には大観の作品が、「紅葉」以外に20点近くもあり、そのほとんどが展覧会出品作だったのです。さらに驚いたことには、長い間、画集から切り抜いて額に入れ毎日飽きもせず眺め続け、夢にまで見た「雨霽る」が含まれていたのです。苦労の末、2年がかりで全ての大観の話がまとまりかけたところ、購入リストから「雨霽る」と「海潮四題・夏」をはずしてくれと言われました。これは黙ってはおれないと「一目惚れの女性に2年も通い続けて枕金も決め、さあ床入りという時に、枕をかかえて逃げられるようなもんだ。そりゃあんまりじゃないですか」と管財委員会の前で一席ぶち、泣き落とすようにして最後は当館に決めてもらったといいます。
▶横山大観と足立全康
足立全康は自叙伝でこう語っています。
「足立美術館は、時に『大観美術館』と呼ばれることがあるらしい。近代日本画史に不滅の足跡を刻む横山大観の名品が、数多くコレクションされているところから、そう形容されるのだろう。確かに、足立コレクションの基盤となるものは近代日本画だが、その量・質ともに骨格をなすのは横山大観である。長年、大観の偉大さに心酔してきた私としては、本懐を遂げた気分である。大観の魅力をひと言で言うなら、着想と表現力の素晴らしさにあると思う。それは恐らく誰も真似できないだろう。常に新しいものに挑戦し、自分のものとしていったあの旺盛な求道精神が、その作品に迫力と深み、そして構図のまとまりの良さを生んでいる。100年にひとり、あるいは300年にひとりの画家と言われるゆえんも、そこらあたりにあると思う。そんな大画家と私のような落第生とが、絵を通じて縁を結ぶというのは何とも不思議としか言いようがない。人生に対する心意気と気構えにおいて、少しでも似通っているものがあるとすれば、これほど嬉しいことはない」
烈々たる気迫をもって院展を再興し、次々と多くの名作を生み出し続けた大観と、14、5歳の頃から山陰の雪の中を素足にわらじがけで大八車を引き、まったくの裸一貫から、日本一の大観コレクションを有するまでになった足立全康は、ともに辛酸をなめ尽くしたというだけでなく、その発想の非凡さ、着想の素晴らしさ、旺盛なる行動力において相通じるところがあったのでしょう。例えば大観が空刷毛(からばけ)といった新手法を編み出して日本画壇に革命を起こしたことと、美術館の運営などまったくの素人であるといいながら、画期的な運営方法をもって年間50万人を超える、国内トップクラスの来館者を迎える美術館に育てた全康の発想の間には、古い考えに縛られない自由な思考の一致が見られますし、大観の作域の広さと、全康の汲めども尽きぬ着想の多様さには、その視点の広がりを見てとることができます。
また、豪壮一途なようでもありながら、出入りの若い表具師を、いかに酔っていようとも玄関まで見送って出る大観の律義さと、超ワンマンのようでいて、孫のような我々にまで、君はどう思うかと意見を求められる謙虚さ。また、多忙の中、地方新聞のわずか数行の取材に対してさえ、前日からメモを用意し、軽口をまぜながら上手く対応したその後で疲れはててしまうといった一途さは、やはり似ているように思えるのです。
▶夢とロマン
足立全康は平成2年、91歳で亡くなるまで世界の足立美術館にしたいという夢とロマンを持ち続けました。朝に夕に庭を見て、少しでも気に入らないことがあると庭師を呼んでは陣頭指揮をとっている姿や、何年も前に入手し損なった絵画について「いやまったく名作との出会いは人と同じで、縁だね。絵を集めるのは金じゃない。値段じゃない。いいものが出たら目をつむって掴んでしまえということだ。まったくあの絵は惜しいことをした。いまだに夜中にパッと目が覚めては思い出し、眠れん時があるよ」と口角泡を飛ばして語る姿を思い出しますと、要するに足立全康が出会った絵画といわず、庭園といわず、人といわず、それは、「美しいものに感動する心」を何とかして人に伝えたいという想いが、足立美術館のすみずみまで息づいているといえるのではないでしょうか。来館されるすべての人に感動を与える美術館でありたいと願い続けた足立全康であったと思います。